「東アフリカの野生食用植物・在来食の可能性―タンザニアにおける栄養分析を通して」科学研究費基盤B(2018-2022年度)
本研究は、世界の食料問題と栄養格差の背景を踏まえて、野生植物や在来食が人びとの栄養や健康を改善しうる可能性を探ることを目的とし、タンザニア農村において基礎的な研究や栄養分析を実施しています。
研究成果・進捗:
I タンザニアの異なる環境にある4地域で質問票調査を実施
(0) タンザニア2地域(ドドマ州、リンディ州)において質的調査を行ったパイロット調査についてとりまとめました。
大森玲子・阪本公美子・津田勝憲, 2020, 「東アフリカにおける食物摂取状況と健康関連QOLとの関連―タンザニアの2地域における予備的研究から―」『地域デザイン科学』第7号、pp.35-42.
http://hdl.handle.net/10241/00012127
(1) 【旱魃にしばしば見舞われるタンザニア中部ドドマ州】農村81名を対象に食物摂取・健康・社会関係等についてインタビュー質問票調査を実施し、その結果をまとめました。
SAKAMOTO Kumiko, OHMORI Reiko, and TSUDA Katsunori, 2020, "Health, Livelihoods, and Food Intake of Children and Adults in Central Tanzania: From questionnaire interviews in Chinangali I Village, Chamwino District, Dodoma Region",『地域デザイン科学』第7号, pp.43-63.
http://hdl.handle.net/10241/00012127
(2) 【タンザニアの食物倉庫といわれながら乳幼児死亡率が高い南部イリンガ州】農村にて、141名の母親たちを対象に、食物摂取・健康・社会関係等について質問票調査を実施し、その結果をまとめました。
SAKAMOTO Kumiko, OHMORI Reiko, and OKUI Ayusa, 2020, "Situation of Women and Children in Southern Tanzania: From questionnaires in Ifunda, Iringa with focus on food-intake and health", Journal of the Faculty of International Studies, Utsunomiya University, no.49,pp.61-78.
http://hdl.handle.net/10241/00012115
(3) 【食料生産が低く発育阻害が高いタンザニア南東部リンディ州のうち食料生産の問題を経験をしたことがある海岸農村】84名を対象に食物摂取・健康・社会関係等についてインタビュー質問票調査を実施し、その結果をまとめました。
SAKAMOTO Kumiko, Parinya KHEMMARATH, OHMORI Reiko, and Anna C. MARO, 2020, "Health, Livelihoods, and Food Intake in Coastal Southeast Tanzania: From questionnaire interviews in Kijiweni Village, Lindi Region", <span class="deco" style="font-style:italic;">Journal of the School of International Studies, Utsunomiya University</span>, no.50,pp.11-29. http://hdl.handle.net/10241/00012361
(4) 【食料生産が低く発育阻害が高いタンザニア南東部リンディ州のうち食料生産の問題を経験をしたことがある内陸農村】88名を対象に食物摂取・健康・社会関係等についてインタビュー質問票調査を実施し、その結果をまとめました。多様な野生食物が活用されていることがわかりました。
SAKAMOTO Kumiko, Parinya KHEMMARATH, OHMORI Reiko, and Anna C. MARO, 2021, "Health, Livelihoods, and Food Intake in Inland Southeast Tanzania: From questionnaire interviews in Malolo Village, Lindi Region", <span class="deco" style="font-style:italic;">Journal of the School of International Studies, Utsunomiya University</span>, no.51.
II 4地域の質問票調査から野生食物摂取と健康の関係を分析
4地域を比較し、特に半乾燥地ドドマ農牧村、リンディ州内陸において、野生食物摂取と高い主観的健康評価 (QOL) に関連があることを見出しました。
(1) 阪本公美子・大森玲子・津田勝憲, 2020年6月「野生食用植物の摂取頻度と健康の関係―タンザニアにおける地域比較―」国際開発学会春季大会
(2) 阪本公美子・大森玲子・津田勝憲 , 2020年12月「タンザニアにおける野生食物の摂取と健康の関係―年齢・食糧不足・貧困も加味した4地域比較分析―」国際開発学会全国大会
(3) 阪本公美子・大森玲子・津田勝憲(2021)「タンザニア3地域における野生食物の摂取と健康の関係―中部半乾燥地、南東部内陸・海岸沿いの事例に基づく考察―」『国際開発研究』第30巻、第2号、pp.93-112(査読付)
III 半乾燥地ドドマにおける食用雑草の役割と栄養分析
上記分析から野生食物摂取とよい健康の関係がみられた半乾燥地ドドマにおいて、野生食用植物の研究をすすめました。
(1) 阪本公美子・大森玲子・津田勝憲, 2020年5月, 「野生植物を食べると健康になる?タンザニア中部ドドマ州Chinangali I村における質問票インタビュー調査より」アフリカ学会発表
(2) 対象地域での聞き取りや先行研究をもとに、食用雑草の栄養分析も実施しました。
Sakamoto Kumiko, Lilian Kaale, Ohmori Reiko (draft) "Nutrient content of seven African wild leafy vegetables in semi-arid Tanzania."
IV 野生食用植物の調査
半乾乾燥地ドドマ、南東部リンディ海岸沿い~内陸にて、野生食用植物の聞き取り・採取・同定する調査をしました。調査結果に栄養分析(上記&先行研究)を加え、地域に還元できるような形でまとめる準備をしています。
Sakamoto Kumiko, Frank Mbago, Hayashi Masayuki, Ohmori Reiko, ongoing, Edible Plants of Tanzania and its Nutrition
V 食事の地域比較
ドドマ・リンディ(雨季・乾季)、ダルエスサラーム各5世帯、計15世帯で、写真を活用して実施した質的食事調査をもとに、食事の地域比較をしました。
(1) 入手方法(採取・自給・購入)に着目し、分析しました。
阪本公美子・大森玲子・津田勝憲, (2021年5月22-23日)「食品群別入手方法比較(採取・自給・購入)―タンザニア3地域15家庭食事調査から」日本アフリカ学会発表
阪本公美子・大森玲子・津田勝憲(2022)「食事日誌からみるタンザニア3地域における食品摂取―食品群摂取頻度・入手元・世帯差に関する分析の試み―」『宇都宮大学国際学部研究論集』第53号、pp.15-30
(2) 世帯内での食物摂取の違いを洗い出してみました。
阪本公美子・大森玲子・津田勝憲, (2021年6月)「家族の食事と個人の栄養摂取:タンザニア3地域の家計食事調査と個人インタビューから」国際開発学会春季大会
(3) 3地域での食事パターンと食品の組み合わせも分析し、とりまとめました。
VI 栄養摂取・健康の地域比較
質問票調査で集めた4地域のデータをもとに、食品群別摂取頻度から食事パターンを類型化し、地域比較、主観的健康(QOL)・貧困・相互扶助との関係を分析し、まとめました。
VII 食事パターンの変化・在来食・野生食物―富と健康に関連して
本研究課題の集大成として、タンザニアにおける調査から共編著を企画しています。
ここまでが研究計画で想定した内容ですが、子どもの焦点をあてた調査も着手しました。
VIII 子どもの食
(1) リンディ市の小学5年生96名から集めた質問票調査で、食品群別栄養摂取、健康評価に関する情報を集め、相互の相関関係を分析しています。パイロット的に実施しましたが、興味深い結果が出てきそうです。
Sakamoto Kumiko, Parinya Khemmarath, Anna Maro, Ohmori Reiko(2021)"Food Intake and Health of in Southeast Tanzania: Preliminary Questionnaire in Rahaleo Elementary School, Lindi City", <span class="deco" style="font-style:italic;">Journal of the School of International Studies, Utsunomiya University</span>, no.52,pp.27-38.
(2) ドドマ州農牧村、ならびにダルエスサラーム市の子どもたちに食事の絵を書いてもらいました。絵を通して、子どもの視点からみた食事を分析したいと考えています。